山田 節子
山田 節子
デザインコーディネーター
㈱トゥイン代表
自然を疎かにしてきた人間社会を戒めるがごとき<コロナ禍>最中の厳しい課題を負った審査会となりました。
漆は、漆の木の樹液を頂き、素地の多くも又木の命を頂く。漆は作られ方次第、使われ方次第、温もりある、深き美しさは、他に類を見ぬ生き物の如き力を秘めた、自然からの贈り物であればこそ、今回の審査会で、何を選び、何を伝え得るのであろうか、その役割の重さに、緊張を覚えたことでありました。
会場を巡る中で、作品主義に走らず、時代が必要とする答えを、様々に表現された、幾つかの仕事に呼び止められ、対話の機会何よりでした。
その中でも、大賞に選ばれた<割木四段重箱>の存在は見事でした。これから誰もが避けて通れぬ、「人と地球を考えたものづくり」に、きっぱりと一つの答えを出してくれた仕事でありました。役目を終えた漆の老木を、鉈で割り、その木目を活かし、拭き漆で仕上げた力強き重箱。若き仕事師の、きっぱりとした、ゆるぎなき心意気に、救われる思い致したことでした。
他にも、木を切ることすら躊躇われ、沖縄に移住し、大王椰子の落ち葉を素地に麻布と和紙で裏打ちし根来で仕上げた1m程の大皿。露滴る森の空気感を、一屏風絵を見るがごとく10㎝程の八角箱に描き込んだ小箱など・・・・。未来への風が感じられ、次回は海外からの作品を含め、更なる出会いをと、念じる想い致したことでありました。
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