山村 慎哉

山村 慎哉

山村 慎哉

漆芸家
金沢美術工芸大学教授

画像と資料を元にした1次審査の結果について出品された方はどのように受けとめているのでしょうか。今回は特にコロナ禍の下での審査ということもあり、審査員が提出した入落の投票結果の集計を元に決めさせて頂きました。つまり前回のように作品ついて審査員たちの語りの場が持てない1次審査となりました。当然、審査のあり方に問題があったわけではありませんが、写真からは得られない作品の空気感や作家の本意を審査の場で話し合えることができなかったことも事実です。公募展の入落への疑問は今回だけの問題ではないにしても、総点数が増えた本展の審査においても、ベテランから有望な新人の作品を見落としなく本審査へつなげるというその方法と適確さが出品者にも審査員にも改めて重要なことであると大きく気付かされました。

私たち表現者は伝えることの意味を再考する過渡期にあるのではないでしょうか?コロナは別の側面から当然とされてきた多くの事柄に疑問を投げかけてきます。と同時にこれまで良しとされてきた慣例を見直す機会をも与えてくれます。モノを産み出し他に納めることを最終の目的としても、その過程には多くのクリアすべき問題と人々の理解を得る大切な仕事が存在します。これらは一見無意味であっても、あるいは不得意な分野であっても創り手は制作すること以上に人々や社会から求められる現実がここに存在するのです。

幸いにも本審査は良作にも助けられ白熱した審査会を開くことができ、大賞の作品をはじめテーマ性のある作品にも各賞が付与されました。と同時に私は1次審査で選外となった作品の中にも漆の未来へとつながるすばらしい作品がきっとあったと信じます。すべての方に伝えることの意味を真摯に受けとめ、次へのチャレンジをお願いしたいと思います。

 

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