山村 真一
山村 真一
デザインコンサルタント
㈱コボ代表取締役社長
今回の国際漆展・石川2020は第12回目で、先回2017年度第11回の176点に比べ今回は39点も多い215点(海外70点含む)の総応募点数であった。応募点数が多くなったのと同時に応募参加年齢の幅が今までより大きく広がっていた。これは将来の漆産業を考えても素晴らしい傾向であるといえよう。またアート部門、デザイン部門ともに応募作品の分野は前回と同様多様化していて純粋なアート作品、器物、アクセサリー、楽器、仏具、文具、オーディオ機器部品に至る広域なテーマの応募状況であり、今回は特に技術や材料や手法のバリエーションの幅の広さに驚くほどの多様化が見られ、1万年以上、旧石器時代からの歴史を持つ「漆」の世界であればこその幅の広さと奥深さに改めて考えさせられる審査会であった。
今回の大賞に選ばれたデザイン部門の「割木四段重箱」は、漆を採取し終えた漆の木を円空の仏のように大胆に鉈で外形を削り出した後、その中心内部をくりぬいて底板をはめ、伝統的な漆の技法で美しく仕上げた作品である。漆の木の植樹、漆の採取、伐採乾燥もすべて自分で行っている漆作家であるからこそ思いついた技法であるといえよう。漆の木を育てて採取し終えた漆の木に作家が新しい命を与え漆器としてまた数十年、数百年の命を繋ぐ素晴らしいコンセプトは今世界共通の課題であるエコロジカルなコンセプトであり、漆の生産量が僅かな日本だからこそのテーマといえよう。