川上 元美

川上 元美
デザイナー
㈲川上デザインルーム代表
先般、そごう美術館(横浜)で、能登半島地震や豪雨災害からの復興支援として「artisansと輪島塗 ―輪島塗 そのさき―」展が開催された。漆素材から制作のためのあらゆる道具、製作プロセス、仕上げのサンプル、職人の技術など普段は目に触れることのないものや作家の作品などを網羅した大々的な展覧会を見て、改めて今日に至る伝統漆芸による生活道具、文化の到達点のようなものを感じた。その伝統の上に明日を映し出す表現を求めると共に、轆轤、木工旋盤のみならず、乾漆の粘土や石膏型或は木胎から発砲スチロールの熱線加工、FRP成形、3DプリンティングやCNCルーターを活用した新しい造形や漆芸の表現が、若年層の間で近年増えてきた。
このコンペは、古くて新しい素材「漆」を新たな生活提案や新しい感性の造形、アートの国際交流を通じてその魅力を広く再認識して行くことが期待されている。
今回、漆を介した交流をすでに実践している日仏3人のユニットによるスツール「ASA」がデザインの部門で銀賞に選ばれた。シンプルで優美な形状で、構造材にはハニカムと麻布を使用した乾漆技法の一対で、漆の塗り立てと、呂色仕上げの2種類あり、裏面は梨地仕上げの軽量なスツールである。
川上賞には、輪花の形をしたフラットな面の美しい落とし蓋、その稜線の繊細な襞、それに呼応する大らかな曲線の胴振りでふっくらとして上品な艶を活かした塗り立て仕上げで、底部まで神経の行き届く凛とした佇まいの「乾漆輪花水差」を選んだ。
