山田 節子

山田 節子

山田 節子

デザインコーディネーター
㈱トゥイン代表

歴史に学び、そして、これからの人間社会が、類い稀なる命を宿す「漆」の恩恵を生かし、如何なる創造世界を創出することができるのか。「漆の新たな可能性」を見出す国際公募展として、1989年に始められた国際漆展・石川。コロナ禍が未だ癒えず、何ごとによらず不安多き時の中での審査会となりましたが、この度も国内外から「漆の世界の未来」を示唆するに相応しい作品が寄せられた、大切な場であると感じたことでした。
今回の審査会の中で私の心に深く残った二つの作品がありました。
その一つが金賞に選ばれた「長手重箱」として創出された青森の「七々子塗盛器『朱玄』」。現代の暮らしに叶う、おしゃれな蓋物でありますが、使わぬ時は「置き床」として<花一輪に季節飾り>も好し、まさにこの国が育んできた<床の間文化>と<食文化>の今を和合させた、日本のしつらいを<今>に表徴した、<一器多様>の傑作で、審査会場に入るなり、私の目に飛び込んできた作品でした。
もう一点が奨励賞に選ばれた、スペインの晴れた空気感の中で生まれ育ったであろう作者ならではの「36 Souls」。白木のブロックで一面だけが屋根の如く様々な角度で傾斜し、色とりどりの心弾む文様が施され、一つ一つがおしゃれなアートオブジェであり、漆の在り様に新たな風を送り込んでくれた作品で、子供は無論の事、大人へのプレゼントにするも好し、国際漆展ならではの漆の世界への新たな表示灯に思えたことでした。

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