志甫 雅人

志甫 雅人

志甫 雅人

(公財)石川県デザインセンター チーフディレクター

「漆の未来は明るい」と、何故か、本審査会場に集まった作品の数々を目にして感じました。漆がおかれている現状の厳しさを考えると、とても楽天的な見方であると承知はしているのですが。

作品は前回以上に多様性に富んでおり、ベテランの作り手から新進の作り手までが、独創性や制作意図のおもしろさ、作品の質の高さの観点で競い合い、コンペならではの緊張感を漂わせていました。

作家の個性が光る作品や超絶技巧を誇る作品、また長く使える暮らしの器・道具や工業製品のようなプロダクトなど、作品の方向性は多岐にわたり、アート部門やデザイン部門といった括りだけでは捉えられない表現や提案が多く見受けられ、まさしく審査員泣かせの審査会となりました。

アート部門では自由で軽やかなかたちが美しい造形作品やモチーフの生きものの息づかいが伝わってきそうな作品、日常の身近なものを漆の技巧を凝らして再現した作品などに高い評価が集まりました。またデザイン部門では産地や地域の伝統技法を応用しながらも新しさを感じさせ、実際に使ってみたいと思わせる作品が多くみられました。

今回、出展された漆作品に接してみて私が強く感じ、気付かされたのは、作り手が漆に対してごく自然体で自在に取り組む姿勢でした。そのため作品からは心地の良い「かるみ」を感じることができました。作品が器であれ、オブジェであれ、暮らしの中に取り込み、愉しんでいこうとする「生活の美意識」を強く感じたわけです。冒頭に「漆の未来は明るい」と述べたのもこの所以ではないかと考えます。漆の器や道具、そして身に着けるもの、居住空間を彩るもの、身近にありほっと安心するものなど、漆は、これからの暮らしの中でもっと再認識されるべきものだと思います。今後が大いに楽しみです。

 

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