講評会

審査員特別賞受賞作品(7点)について(1/4)

枝羽-風の舞-

枝羽-風の舞-
Wing of Foliage -Dance of the Wind-
W80 × D43 × H30
2018
村本 真吾
MURAMOTO, Shingo (Japan)

大西  ───── ありがとうございました。それでは、次に審査員特別賞についてなるべく手短に講評して頂ければと思います。まず大西長利賞から講評を述べます。
「枝羽―風の舞―」を制作した村本真吾さんは金沢のご出身で、東京藝大で学ばれた方です。一貫して風が一つのテーマなのです。風の正体は非常につかみにくいのですが、感じられるものです。そよ風のような優しい風から強い嵐の風まで様々ありますが、風に吹かれるとか、風にはいろいろな面白さがあって、我々に喜びを与えてくれる本当にありがたい存在ですよね。
それを漆という非常に薄い塗膜をなるべく重ねて、強度を保てるように造形していて、正体が具体的に見えない、言ってみれば文学的な表現を視覚的に表しています。そこには人間の心のそよぎというか、動きと連動しながら、我々の喜びでもあり、ある意味では悲しみを味わう時もありますし、そういうことを一貫して表現している方です。正体不明の物体を表現するには、感じないことには表現できませんよね。非常に期待される作家でもありますし、私自身、いつも一貫した彼の作品を楽しみにしており、今回も非常に期待した作品です。
次に川上先生、お願いします。

円と線 Dot and Stripe

円と線
Dot and Stripe
W16 × D16 × H16
2020
木下 幸
KINOSHITA, Miyuki (Japan)

川上  ───── 私が選んだのは、木下幸さんの「円と線」です。私は当初、川上元美賞の選定に大変迷いました。迷って歩いているうちに、なぜかここに引かれていって立ち止まってしまったのですけれども、キューブの中に幾何学的な模様が施されており、螺鈿と鏡面の仕上げ、それと柔らかいマットの仕上げのコントラストが若々しく思いました。ものすごく硬質感のある上塗の仕上げに墨の粉で仕上げたようなマットが合うのです。この作品はキューブでありながら、ちょっと柔らかい弧を描いているのですけれども、これがなかなか魅力的で、技法的にはまだこれからという若々しさを感じます。その辺に引かれて、どんな方かと聞いたら、石川県の金沢卯辰山工芸工房で学ばれた若い作家ということでした。
実は作品提出の前に壊れてしまい、一時諦めようとしたそうですが、何とか間に合ったと聞いて、どうにか健全な形で見られました。それもまた大変良かったと思っておりまして、迷った末にこれを選びました。本当に意味なく引かれていったという感じでしょうか。これを自分がどう使うかというと、蒔絵の難しさといいましょうか、どうやって使おうか、どういう蓋物になるのかちょっと悩むところではありますが、何か得も言われぬ魅力を感じて私の賞にしました。
大西  ───── 次は、山村真一先生、よろしくお願いします。

タイトルとURLをコピーしました