講評会

審査員特別賞受賞作品(7点)について(2/4)

漆 TABLEWARE Series "F" Urushi Tableware Series "F"

漆 TABLEWARE Series “F”
Urushi Tableware Series “F”
W42 × D30 × H18
2020
石井 昭
ISHII, Akira (Japan)

山村真一  ───── 石井昭さんの作品「漆 TABLEWARE series “F”」です。Fは恐らくファイバーの略ではないかと私は思うのですが、最初にお話ししたように、やはり器材が非常に工夫されています。これは、円筒形のクラフト紙に、セルロースナノファイバーを漆で練ったものを含浸させて強度を出すという技法のテーブルウエアです。まずグリップを付けることは、機能的にいろいろな条件で非常に使いやすい場合もあるのですが、形としてはなかなかまとまってきません。かえってグリップがない方がいいのではないかということで私もいろいろやってみて、最後はやはりグリップを取ってしまうことがよくあります。
これはグリップが付いていることを生かした形をうまくまとめ上げて、しかも円錐台形であるためにこのグリップがぴったり合うのです。更に、握った時にとても手のうちにしっくり来ます。どのグリップ付き器も本当に持ち運びやすいし、ポットもつぎやすいです。これをスタッキングする(重ねる)と、また一つのテーブルディスプレイとして非常に面白い形になります。
とかく食器というのは並べると平面的になってしまって、食器売り場は本当に凹凸のないぺたんとした感じで、なかなか迫力が出てこないので、何か立ち物が欲しいということがよくあります。そうすると仕方なく縦長の花器を中に置いて、花を生けたりして演出するのがテーブルウエアの売り場です。しかしこの作品は、そのものを重ねていくとこのようにいろいろな形をした立体的なオブジェになっていきます。非常に機能と形をうまく使い、しかもクラフト紙という安価な器材に漆をうまく生かして、例えば木を使わなくてもできる漆食器のようなものがこれから出てくるかもしれません。これも非常に新しい一つの方法として着目しました。
持ったり握ったりいろいろな使い方をされると使い勝手が非常にいいということなので、よくこういうことに気が付いたなと感心させられました。ましてや、材料である漆クラフト紙の開発も、明治大学と一緒に組んでパテントを取るような、製品化するところまで非常にしっかり自らで考えられています。漆としては元々素材開発はあったことなのですが、新しい時代を迎える予感がするテーブルウエアの作品でもありました。
大西  ───── ありがとうございました。強度の問題は真剣に考えないといけない問題ですが、そこは経験を深めていくことによってクリアできることだと思います。先生がおっしゃったように、非常に可能性があります。しっかりと強度をクリアすることをお願いしたいと思います。

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