講評会

質疑応答(1/2)

大西  ───── ありがとうございました。作家の方も大勢いらっしゃると思いますし、質疑応答の時間を取りたいと思います。質問は大事です。直接この機会にお話しして頂き、先生方からもコメントを頂く機会にして頂きたいと思いますが、ご質問がありましたらお願いします。
質問者1  ───── 質問が二つあって、一つは金賞の大谷さんの作品がどういった技法、工程で作られているのか、分かる範囲で教えて頂けたらと思います。もう一つは、大賞を取られた本間さんへの質問で、その作品を作った時に最初から頭にその形があって作られたのか。大賞を取られた後にこんなことを聞くのも何なのですが、作っている途中にこんな失敗があったとか、制作に当たってのエピソードが何かあれば伺えたらと思います。
大西  ───── 本間さんは幸いにもご出席頂いておりますので、いろいろ感じたことをおっしゃってください。
本間  ───── 結構時間をかけて頑張って作っています。本当はバンバンバンバンと割って、「はい、できた」というふうにできるとかっこいいのですが、なかなか思ったように割れないし、木目を読んだり想像したりしてこういうふうに割りたいというのはあるのですが、やはり3割ぐらいは違う方に行ってしまったりして、せっかくあとちょっとで完成するという時に作品を台無しにしてしまったりということが結構あって、時間が掛かってしまいます。大胆にやるところもあるのですが、自分がいいなと思うところが1カ所できたら、そこからバランスを取って作っています。
大西  ───── 自然のものというのはあまり作っては面白くなくなるのですよね。割った時の瞬間の働きに力があるわけで、それを作って、そのように見せようとしたら力が落ちてしまいます。そこを注意することが大事ですよね。だから、失敗することは多いわけです。思うように木は動かないですし、言うことを聞いてくれません。刃物も聞いてくれません。そうすると、その瞬間の形に出会えた時がラッキーであり、喜びになるわけですね。そういう性質を持っている作品と言っていいかもしれません。
漆の仕事は、自分の思うようにとことんできるものなのです。だから、今までいろいろな作品がありましたが、そういうとことんやったものに、とことんの良さというか、粘り強さのようなものがあるのですが、こういう作品は、「竹を割ったように」とよく言いますが、その割ったことが一番大切なことなのです。それを割ったように見せかけて作ってしまったらもう駄目なのです。ですから、真剣勝負ですね。恐らく本間さんは極力そうならないように努力されたと思います。そこが一番の狙いだと思いますね。
田中  ───── 大谷さんの作品に関しては、乾漆であるということは分かっているのですが、本人の説明が詳しく聞けないので、正直に言うと正確には分からないです。私もそれはすごく気になっているのですが、材料の欄を見ますと、乾漆の後に針金と書いてあります。あと一部、樹脂と書いてあります。だから、恐らく幾つかのパーツに原型を分けて、それをつなぐ要素として使っているのではないかと思います。詳しいことはまだ本人に確認できませんので、本当に申し訳ないのですけれども、私もすごく気になっています。ただ、形自体は本当に軽やかな、蝶々をモチーフにした表現としてまとまっています。

質問者2  ───── エントリーされた作品の中で外国の方の作品もあったと思うのですが、外国の方の作品はどんな感じだったのでしょうか。
大西  ───── 近いところでは韓国や台湾というのもありましたが、ちょっと珍しいところでロシアのことを申し上げます。壁掛けのような形の作品ですが、ロシアにホフロマという所があって、言ってみれば輪島のような所があるのです。ボルガ川の畔です。ホフロマは塗り工芸の産地といいますか、マトリョーシカというロシアの有名な民芸品の産地の一つです。マトリョーシカはものすごくデリケートで、漆というよりも塗料を工夫して、漆のように使い込んでいるのです。実に彼らは蒔絵を一つの見本として、彼ら独自の方法でやっています。それなりの伝統がありますから、あそこまでいくものだなという感じで感心しているのです。今回も2点ほど出品されました。ホフロマでマトリョーシカを作っている作家たちです。非常に熱意があるのです。ここ数回出品してきていて、前回は入賞しています。
世界の塗りにはものすごく面白いものがたくさん潜んでいるのです。中国の山奥にもありますよね。少数民族がひっそりと塗りをしている所があるのです。それから、インドのカシミール方面でも桃源郷のような自然の中で塗っています。それこそ先ほど話があったように、紙の繊維を使って形を作るわけです。そして、インドのカシミールの場合は漆ではありませんが、それに塗料を塗っています。
要するに、同じようにコーティングしているわけです。塗るという言葉は面白いですよね。ぬるぬるしているけど、塗るというのですよね。だから、塗り文化は非常に優しくて、お化粧を塗る時も指で塗るでしょう、これも塗り芸術です。私はそう見ています。ですから、塗りというものは人間にとって非常に大切なものです。それをこの国際漆展・石川でこれから未来に向かって展開していきたいと思っています。

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