講評会
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審査員特別賞受賞作品(7点)について(2/3)
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山村真一賞
漆ドロップス -帯チャーム
Urushi Drops
W1.2 × D3 × H1(各)
2023
後藤 千佳子
GOTO, Chikako (Japan)
玉屋 ───── どうもありがとうございました。それでは次は、山村真一賞です。後藤千佳子さんの「漆ドロップス -帯チャーム- 」です。山村真一先生、お願いいたします。
山村真一 ───── 後藤さん、おめでとうございます。素晴らしい作品です。今回の応募の中で最も小さくて、かわいらしいアクセサリーです。長さが10mm、幅がわずか数ミリで、紡錘形の美しい、帯紐や帯に付けるアクセサリーです。帯チャームといわれています。とても小さいながら、実はよく見ると本当に驚くほど精緻な加工がされています。そしてこの小さな紡錘形の雨だれのような空間の中に、沈金が本当にきれいに施され、光の角度に応じてきらりと輝く、いかにも厚かましくなく、さっと見せるという、まさしく日本人の得意とする美学の一つではないかと思います。アクセサリーというと、ともすると「これでどうか」というふうに見せるものが多くなっていますが、帯紐の部分にそっと下げて、美しさをさりげなく見せるというあたりが本当に美しい作品だと思います。
この他にもアクセサリーやイヤリングが幾つか出されていました。特に今回、小さな世界の中に込められたまさしく精緻な技術が本当に素晴らしいと思いました。紡錘形の雨だれのような空間の中に込められた美しさが光によってそっと光ったり見えなくなったりする、本当にうつろげな世界はまさしく日本の得意とする技ではないかと思います。見事にこういうものを完成させた、最も小さな世界ではありますが、最も美しいものではないかというふうに評価しました。
玉屋 ───── どうもありがとうございました。それでは次は、山田節子賞です。ゲブラー・ラベア(GEBLER Rabea)さんの「Moon Flower」です。山田先生、お願いします。
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山田 節子 賞
月花
Moon Flower
W12 × D12 × H7.5
2022
GEBLER, Rabea (Japan)
山田 ───── 自然の形から本当に見事に柔らかく器を作り込んでいて、美しいなと思わされました。なおかつ、仕上げも素地の中をきれいに見せて、外側を漆で仕上げている。こういうものが自然の花びらのごとく生活の中に入ってきてくれたら、漆の存在感がまた違う意味を持ってくるのかなと思って、今回選びました。きれいです。何を盛ってみようかと思いながら、野菜類もきれいだろうし、煮物でもいいだろうし、いやいやそうではない、乾いたものでもいいよねという、身のそばに常に置いて楽しみながら使っていける。そして、漆独特の軽さがまた素晴らしく、花びらの一枚一枚が器を作ってくれたような優しさを感じながら見せていただきました。
漆展の審査をさせていただきながらいつも思うのですが、可能性はまだまだあって、私たちはその可能性を使う人たちにどうアピールしていけるのかなと思うのです。私などはコーディネーターという仕事をしておりますので、そのことの大切さをすごく感じて今回は審査をしました。漆文化が日本から世界へ良い形で発信されていくことを強く願っております。
私の友人がパリのまちなかで和食のレストランをしているのですが、海外のお客さまが漆器にとても興味を持って使ってくださっているということです。ですので、今後ますます漆の世界が広がっていって、世界に新しいぬくもり、美しさを広げていってくださると、日本の人たちにとってもうれしいことだと思っております。この作品を本当に抱えて持ち帰りたい気分がしました。ありがとうございました。