講評会
審査員特別賞受賞作品(7点)について(4/7)
棗 ─────次は、御手洗照子賞でございます。
新美える結様の「Through the Layers – Wide」でございます。御手洗先生、よろしくお願いいたします。

御手洗 照子賞
Through the Layers – Wide
W111 × D11 × H48
新美 える結
NIIMI Elm (Japan)
御手洗 ─────新美える結さんの乾漆の作品は、会場に入ったときから、非常に目立つ、心を捉える作品でした。乾漆らしいダイナミックな動きがあり、作品の説明に「研ぎ破りを蒔絵としてなぞり描き」とご本人が書いていらっしゃいますけれども、そのような、ダイナミックさや大胆さを生かしながらの繊細な加飾という程良いマッチングで、これはもうセンスだなと思うのですね。
今回、全体的に感じたことは、すごくセンスのいい方が多いなということです。特に若い方。先ほどコメントさせていただいた村田さんの作品もそうです。センスというのはもちろん努力によっても開発していけるのだけれども、かなりギフテッドなのではないかと思うのですね。もちろん、生まれながらということもあるけれども、何を見てきたかということも大きい。これは、何も美術品などを見てきたことというよりも、むしろ自然の、例えば、木の葉が重なり合って光を通す美しさとか、水の流れをずっと見ているときの美しさとか、それは私にも分からないけれども、何かそういうものの蓄積だったのではないかと思うのです。
ただ、センスを、ギフテッドを持った方は責任があると思います。人の一生というのは、自分の持ったものをどれだけ伸ばし切って、最後生涯を終えられるかということではないかとどなたかが言っていましたけれども、そういう意味では、皆さん、特に若い方たちは、本当にこれから磨きをかけてほしいなと思います。
それから、マーケットの方の話でいうと、乾漆というのは一般の方は案外まだ知らないのですよね。漆というと、木に漆を塗ったものでしょうという方が多いぐらいなのです。だから、漆の世界では、乾漆というのは今やメインストリームになりつつあると思うのですけれども、一般の中では、まだそういう認識なのだということを心して、どんどん発展させていかれたらと思います。
この新美さんの作品は壁に掛けるものなのですね。今、どんどん新しいビルや建築などができてきています。特に最近は、どこかで和の感覚を持った建築というものが、世界の中の日本になればなるほど、注目されるわけですけれども、そのときに壁面に掛けるものは、従来の油絵や写真などのタブローではなく、このような半立体というのが注目されるのですね。だけれども、半立体を木彫でやろうとするととても重くて、構造に負担をかけるものが多い。そういう意味で、この半立体の乾漆というものは、これから注目に値する方法論ではないかと思います。どうぞ頑張ってください。
棗 ─────御手洗先生、ありがとうございました。ただ今の御手洗賞を受賞されました新美様が会場にお見えになっておりますので、ご紹介させていただきたいと思います。どうぞ、前の方へ。どうもおめでとうございます。この作品に対する、込められた思いやコメントを頂ければと思います。
新美 ─────新美える結と申します。この度はありがとうございます。また、講評のお言葉も頂き、ありがとうございます。この作品は、壁掛けの乾漆作品なのですけれども、研ぎ破りという、漆の作品を作る上では作家たちは絶対に分かる現象だと思うのですけれども、研ぎ破りを漆自身がデザインした加飾として捉えて、蒔絵をした作品となっています。これまで作ってきた作品は、自分が決めた文様を蒔絵して常に描いていたのですけれども、もっと漆に寄り添いたいというか、漆の現象を捉えて蒔絵という行為をしてみたいと思って挑戦した作品でしたので、このような賞を頂き、とてもうれしく思います。ありがとうございました。
棗 ─────どうもありがとうございました。
