講評会

審査員特別賞受賞作品(7点)について(5/7)

棗 ─────続きまして、田中信行賞は、加藤萌様の「夜が咲く」でございます。田中先生、よろしくお願いいたします。

田中信行賞 夜が咲く


田中信行賞
夜が咲く
Night Blooms
W44 × D31× H31
加藤 萌
KATO Moe(Japan)

田中 ─────加藤萌さんは、以前も確か国際漆展・石川で受賞されていて、現在、着実に制作活動され、評価されている作家の一人だと思います。彼女は今、岡山県に暮らしながら、ずっと動物をモチーフに制作をされています。今、若い人の中では、ジャンルを問わず、また素材を問わず他の素材でも、動物や昆虫など生き物をモチーフに制作する人が多いですが、漆ではまだまだ少ないと思います。そういう中で、実力を持った作家の一人かと思います。表現力、造形力も確かなものがあります。彼女の作品への言葉を改めて読みたいと思います。「一見、黒。けれども、じっと見つめれば、夜はほどけ、子どもの黒豹の斑紋がゆっくりと花のように浮かび上がる。山奥で過ごす夜、目が慣れるほどに色彩が増していくあの感覚を漆の層に重ねました」というコメントです。
彼女のような作品は、基本的にはまず作品だけを見てどう感じるかですけれども、コメントを読んで、作者がどのような環境で日々暮らし制作をしているか、自然豊かな環境で、自分と、素材と、向かい合って制作しているということが、本当にこの言葉から伝わります。改めて、今回そのような作者の思いと作品に対して、エールを込めて賞とさせていただきました。
ただ一つ講評として加えさせていただきますが、粘土で原型を制作し、それを石膏型にして、乾漆で胎を制作しています。そして、動物の顔、目、毛並み他、それぞれを下地、漆塗面、磨いた面などで工夫して表現しています。漆の塗り面を美しく見せた面と、毛並みや下地表現などのテクスチャーのある面とを常に効果的に対比させながら見せているのですね。そこに彼女の表現の特色があると思いますが、今回の作品では、もう少し工夫があってもいいかなと思いました。私は彼女の他の作品も見ているので、塗り面とそうではない箇所とのバランスなどが、ちょっとパターン化しているように感じました。もう少し変化があってもいいのかなと思いました。同じ作り手として、どうしてもある程度一つの表現が評価されると、だんだん同じような作品作りが続き、マンネリ化、つまり自己コピー化するとことがあります。この方向でさらに作品を深めていくために、まだお若いと思いますが、時代の流行とか周囲のことを気にせず、自分のペースで作品の制作を続けていってほしいと思います。作品やコメントからですが、いい作家さんだなと思いました。
棗 ─────田中先生、ありがとうございました。

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