講評会

銀賞受賞作品(2点)について(2/2)

棗 ─────引き続きまして、銀賞、デザイン部門の作品でございます。ピノン・ニコラ(PINON Nicolas)様、リンカ・ディミトリ(HLINKA Dimitry)様、トキ・ケンジ(TOKI Kenji)様の「ASA」でございます。川上先生、よろしくお願いいたします。
川上 ─────これはデザイン部門の中で興味深い作品で、なかなか拮抗していましたが、いろいろと議論の末、デザイン部門の銀賞になりました。この展覧会の趣旨には、海外との交流も含めてデザインを活性化させるといったことがありますが、既にこの本人たちが国際交流をしている中からできた作品かと思います。
作品はスツールです。「ASA」という名前が付いていますが、これは恐らく麻布の「あさ」ではないかと思っています。形としては大変オーソドックスな形のスツールなのですが、漆と組み合わせた素材に新しさを感じます。近年、特に若い人たちは、漆の素地として、発泡スチロールから始まり、NCRを使って切った薄いプラスチックなど、いろいろなものを考えますが、この作品ではハニカムを使っています。ハニカムというのは一般的に強度が強い材料で、そのハニカムにも、紙ハニカムからアルミのハニカム、アラミドハニカムまでいろいろあります。この作品でどのタイプを使われたかは分からないのですが、いずれにしろ、ハニカムというのは、両サイドをパネルで押さえると非常に強度が上がる材料です。曲げることはなかなか造形的に難しいことがあるのですが、これは曲がった部分が、逆に反っています。単なるC型の形ではありません。薄い素材であると同時に、造形的にも工夫された軽さがあって、ものすごく新鮮さを感じます。朱色と黒の伝統的な漆を表面に塗って、呂色仕上げと塗り立てで仕上げています。軽さは視覚的にも感じますが、持ってみると本当に軽い材料です。そういうものが一つの造形として成り立っています。曲がったところは揺れるのではないかと考えてしまいますが、ハニカムを使って支えられているものですから、強度的にも問題ありません。
それから、交流の中で新しいデザインの世界を生み出しています。これを昔からの手法で作るとしたら、直材を組んでC型にするとか、逆に成型合板で作るかということがあるのですけれども、それを一歩乗り越えて、素地にハニカムを使って曲げて、新しい技術と合流させて完成させたということに新鮮さを感じます。これは今年、モビリエナショナル(※家具調度類の保管、修復を目的としたフランスの国家機関)の収蔵品にもなったようです。そのような交流の成果が既に垣間見えているということで、新しい動きかなという気がして、デザインというジャンルの中で賞として評価されることが必要だろうと思っております。
乾漆の型になるものは、昔は石膏だったり粘土だったりしましたが、特に、近年の若い人は、本当にあらゆる素材を使っていて、いわゆる近代工業の産物と自然の生き物である漆との交流、新旧の交流の中で新しい道具といいましょうか、そういうものを生み出していくという、新鮮で、面白い作品だったと思っております。

棗 ─────川上先生、ありがとうございました。

ASA


銀賞
ASA
W41 × D32 × H45(各)
PINON Nicolas,
HLINKA Dimitry & TOKI Kenji(France)

 

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