講評会

質疑応答(2/2)

田中 ─────実は、僕は審査が終わった後に、そもそも器物が少ないなとは感じていました。例えば、今、アノニマス、無名性といった、自己表現などの私性がないものに実はみんな引かれていて、民芸なんかはすごく人気がありますが、同時に、いい器作りしている方は漆芸でもたくさんいますが、このような展覧会形式に、合わなくなっているのではないかとも思います。この展覧会はアートとデザインで分けていて、では、デザインをどう捉えるかというと、応募要項にすごく短いコメントで「計画的に生産可能なもの」と書いてあるのですけれども、考え方はいろいろあります。私は若い頃に国際漆展・石川に出品していたのですが、昔は家具もありましたし、漆のモダンな家具や器物も求められていましたので、現在より器物の出品も多かったと思いますし、作品の大きさ、規模も大きかった。だけれども、やはり時代とともに、漆に何を求めるかというのは、考え方や価値観、思考も社会状況で変わっていきますよね。
現在でも器を作っている人は多いし人気もありますが、審査が終わった後に雑談で話したぐらいに器が少ないと思いました。いい漆の器も見たいというのは、個人的には思っています。お椀の形を一つ取っても、普遍的ないい形が多数存在していますが、塗り、形、ちょっとした高台、縁の形など、その時代時代で、職人さんがいいものを作ろうという意思を持っていないと、いい器はできないです。話はそれますが、民芸論をやると、何か倫理的な思想的な方向に話がいきがちになりますが、いつの時代にあっても、職人さんだろうが個人作家だろうが、美意識や技術は結局作り手のあり方だと思っています。それがなければいいものは生まれないので、そういう意味では、今の時代の器を見てみたいと思っています。
但し、このような展覧会では、どうしても見栄えや視覚的な要素を強く意識しがちになり、日常使用する器物等が目立たず展覧会には合わない傾向があるので、国際漆展・石川だけではなくて、展覧会自体のあり方を再考する必要があるのかもしれません。単純にデザインと表現に分けるのではなくて。デザインという意味も。だから、やはりそれは出品者側だけの問題ではなくて、展覧会を主催する側の問題でもあります。そのことは、今の時代、社会にどう漆を考えていくかということも関係すると思います。
御手洗 ─────ちょっとだけ、ずっと器を長く扱っていた立場からお話します。漆の器は、中に入れるもの、載せるものが圧倒的に美しくおいしそうに見えるのですよ。だから、うちのギャラリーでは、夕方から、海外の方も含めて、ちょっとワインなどをお出しするときがあり、グラスはガラスですけれども、あとは全部漆を使っています。おつまみなど何を載せてもおいしそうに見えるし、軽いですから扱いが簡単です。そんなに扱いが難しいと思わないですね。釈迦に説法ですけれども、普通に中性洗剤で洗えます。フランス人などは漆の器がもう大好きですよ。血眼になって、探して買ってという人たちを大勢知っています。だから、今インバウンドが入ってきて、漆の器で出しているところが多いですよね。私は、案外楽観視しているのですけれども、どうでしょうか。
志甫 ─────器からちょっと外れますけれども、仏壇がこれだけなくなってきている中で、先ほどコメントでも述べたように、暮らしの中にあって、さりげなく祈りの何かというようなものはすごくマーケタビリティが高いなと思っています。
それから、漆のスプーンというのが、非常に口当たりがいいということで、皆さんから評判がいいのですけれども、今回もそういうものが出てきていました。触覚というのですかね。例えば、手に握ったらすごく安心するとかですね。器もそうなのですけれども、器でなくても、用のないものでも、何か小さなオブジェを握ると心が安らぐというような、やはり漆なり加飾というのは、そんなに安いものではないですから、それなりの金額が取れるものを企画していかなくてはいけないのだろうと思うし、また、そういうものが必要とされてくると思っています。
山村慎哉 ─────今の質問は、こういう展覧会で器を出して、どうなのですかといった質問だったと思うのですけれども、僕も、今、皆さんのお話を聞いていて、使われるという意味では漆の器の可能性は非常にあると思っています。一方で、展覧会に出すとなると、何か他に必要なものがあるのかなとも思います。何が必要かということなのですが、これまでの漆の器の美しさは皆さん理解しているから、そこにプラスして何かこれまでなかったような発見を見せてくれると非常にいいのかなというふうには思います。そういう意味で、どれだけ可能性があるかというところを、器を作られる方には考えていただいて、それを提示していただけると、僕らもわくわくするし、作っている方も、そういうところで自分というのが見えてくると思うので、いいのではないかと感じました。ですので、今回、僕が評させていただいたデザイン部門の金賞作品は、まさにそういうところを感じられる器だったかと思います。
棗 ─────ありがとうございました。よろしいですか。
質問者1 ─────皆さん、とても丁寧に答えていただいて、ありがとうございます。たくさんヒントを頂いたので、これを糧に、次回、またチャレンジさせていただきたいと思います。

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