講評会

金賞受賞作品(2点)について(2/2)

玉屋  ───── 引き続きまして、金賞のデザイン部門の作品です。白川明美さんの「七々子塗盛器『朱玄』」です。山田先生、お願いいたします。

山田  ───── おめでとうございます。この作品が会場にあったことで、私は審査に来てよかったと思いました。日本人の暮らしが随分変わってきて、ここの文化をどうやって現代の暮らしの中につないでいくかという問題は、日本を問わず大切なことだと思い
ます。
これは蓋を開けますと、中に料理が入れられるようになっているのですね。なかなかこまやかに作られています。最初に思ったのは、「こんな器、道具があったら、いい正月が迎えられるね」ということです。床の間を失ってしまった日本人、和食を盛り付ける場を失いつつあるこの国において、こんなに合理的に、また美しく伝統の新しさを形にしてくださったということで、審査会場に入った途端、いい気分で審査ができるなという思いが今回はしました。
さあ、どんなふうに使っていけるだろうか。私もそれなりに自分で想像していたのですが、蓋の上には和の食を盛れるようになっておりますし、蓋を取って中を見てみますと、黒い小箱が入っており、もっとこまやかに細工がされております。伝統の文化を未来につなぐというのは、物を作る人たちにとっては常につきまとう問題だとは思うのですが、伝統の良さを見事に現代の形でまとめてくださっています。普段は小さな床の間として、ちょっと空間があれば季節の移ろいを表現できる場にもできるし、お客さまを迎えるときには食卓に持っていけば料理も盛れるという、一器多様という日本の大切な言葉を表徴する、上手にまとめられた作品だと思います。私も使ってみたいと思いますし、若い人たちにもお勧めできると思いながら見せていただきました。
審査を何回かやらせていただいておりますが、元々あった暮らし方に対して、若い方たちが中心となって、未来に向かって新しい答えを出していってくださる。それが良い刺激になって、この国の文化が改めて発信されています。しかも海外から日本に来て漆を学んでいる方たちが非常に多くて、その方たちが上手に表現してくださっておりますので、ミックスされながらもそれぞれの国の特徴が良い形で育まれていってほしいと思っております。今後とも皆さまのご活躍を願いつつ、良い審査会に参加させていただいたことをありがたく思っております。ありがとうございました。

金賞 七々子塗盛器「朱玄」

金賞
七々子塗盛器「朱玄」
Nanako-Nuri Large Dish “Shugen”
W100 × D18 × H13
2022
白川 明美
SHIRAKAWA, Akimi (Japan)

 

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