講評会

金賞受賞作品(2点)について(2/2)

棗 ─────村田様、どうもありがとうございました。
引き続きまして、金賞デザイン部門の作品、森寛之様の「RAYS PLATE 藍漆」でございます。山村慎哉先生、お願いいたします。
山村慎哉 ─────今回のデザイン部門金賞の作品について、私から講評させていただきます。森寛之さんは、私は存じ上げていませんでした。四国・徳島で森工芸という企業の取締役をされているということです。まず、大きなところとしては、漆の新たな可能性を現代の暮らしの中に美しく提示した作品という印象を持ちました。目を引くのは、この藍漆です。恐らく皆さん聞いたことがないと思いますが、青とも黒とも言い切れないような、深く静かな色合いです。漆は、美しい艶と丈夫な塗膜を持っております。日本の生活文化を長く支えてきた塗料でもあります。一方、この藍は阿波藍で、これもまた単なる塗料ではなく、徳島の風土と人々の営みの中に育まれてきた文化なのだと思います。そして、この二つを結び付けたところに本作品の大きな魅力があると考えております。
藍と漆は、混ぜればすぐに美しくなるというような単純な素材ではありませんし、発色や塗膜の安定性など、さまざまな技術的な課題があったと思います。最初に藍と漆を混ぜるのか、もしくは藍を染料として使い、その上に漆を塗っていくのか、その辺は分からないのですけれども、これを現実にするために、京都の堤淺吉漆店に技術的な協力をもらいながら、長い経験と試行錯誤の上、この深い色を出してきたのだそうです。
さらに、森工芸さんの特質としては、光線貼りと命名されたツキ板の加工で、スライスした木材を表面に張って、それが一つの模様を表していくという加工方法が使われています。この光線貼りは、放射線状につながる木目となっていて、遠くから見るととても静かなのですが、近づいて角度を変えると、光を受けて繊細な表情を見せてくれます。自然が作り出した木目の偶然と、それを生かす人の手。そこに、極めて均一に整えられた、デジタルではできないような美しさが出ている。非常に温かみのある奥行きがあるのではないかと感じています。ご覧のように、形は極めて簡単です。しかし、逆にその簡潔さが、藍漆の色と木目を引き出しているのではないかとも思います。
器だけが強く主張するのではなく、料理が盛られたときの景色まで自然に想像させる美しい作品であると同時に、暮らしの中で培われる道具としてもよく考えられているのではないかと思います。素材の魅力、それを実現する技術、そして、生活へと結び付けるデザイン。その三つが一体となり、伝統を現代の食卓へと開いた作品というふうに捉えさせていただきました。完成度と将来性を高く評価して、審査員全員の統一した意見としてデザイン部門の金賞とさせていただきました。

棗 ─────山村慎哉先生、ありがとうございました。

金賞 RAYS PLATE 藍漆


金賞
RAYS PLATE 藍漆
RAYS PLATE Ai-Urushi
W36 × D36 × H1.2
森 寛之
MORI Hiroyuki (Japan)

 

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