上位入賞作品の講評
[大西] それでは小松先生に、上位入賞あたりをポイントにして、できれば全体の傾向や状況についてお願いします。
[小松]
大西委員長の意向に十分沿えるかどうか分かりませんが、国際漆展もこれで9回です。それから、石川県金沢市で行っている国際ガラス展が11回を数えています。このように、人口40万人ぐらいの都市ですが、石川県金沢市という工芸的土壌の中に、このような国際展が二つも開催されているということは、石川県民が工芸に対して非常に関心が強く、理解があることの表れと言えるでしょう。
輪島や山中は、藩政期前には漆器の産地として形成されていきましたが、金沢の漆器は藩政期から土壌が深まり、加賀蒔絵が完成していきました。そのような土壌の中で、国際展を二つも抱えている上に、重要無形文化財の保持者、すなわち人間国宝が8人もいらっしゃいます。すると当然、若い層や中年ぐらいの方々にも、そのような活動をする方がたくさんいらっしゃいます。あるいは、アート的な分野でも、日本藝術院会員も何人かいらっしゃいます。そのような環境の中で国際展が開かれることに、非常に感謝すると同時に誇りを持っています。
さて私もデザインセンターの役員として、国際漆展には昔からかかわってきましたが、今年度は東日本大震災の風評でしょうか、特に外国、ヨーロッパの方には大変ショックだったようで、出品点数が少なくなったことは残念でした。次回は、それが盛大に行われることを非常に期待しています。
山村先生がおっしゃったように、今度の国際漆展は大変バラエティに富んでいました。いろいろな素材を活かしながらという点や、工芸のアートという創作の姿勢に対する積極的な考え方、あるいは生活に関しての用と美というクリエーティブな働きという面からのものづくりでも、大変良いものがたくさんありました。
その中で、大賞を取られた「相思」という作品は、小さな作品ですがとても伸びやかで、曲線の流れが非常に美しく、漆の特徴である朱と黒が対比的に結ばれていることは非常に効果があります。そして、器の内から感じられる生命力といいますか生命感といったものが、軽やかに品よくまとまって訴えられていると思います。一見、われわれ日本人の感覚と非常に相通ずるようなものが含まれている気がするのですが、これは中国の若い方の作品だということに私自身も驚いています。小さくても非常に質の高い作品だと思っています。
金賞の髪飾り「花蝶風夜」は、大胆な飾りの形態でありながら、非常に品格を持ってまとめてあります。頭に挿すわけですから、木の質にもよると思いますが見た目よりも非常に軽く、ファッション性も心得ていて、外観も髪に非常にフィットする湾曲のデザインにまとめてあります。それから、研ぎ出し蒔絵だろうと思いますが、加賀蒔絵の流れがうまく上品に付けられています。若い方よりも少しお年を召した方の装飾品として、非常に価値のある、評価の高いものではないかと私は感じました。
それから、銀賞の「生命の欠片」の中村有希さんはまだ若く、今は大学院で勉強中と聞いています。紙と漆によってフォルムを固め、そこへ卵殻、螺鈿、金箔が、素材の特質を非常にうまく生かしながら構成しています。見た目には、何か少し乱暴だという感じがしないでもありませんが、じっと見ていると、未完成ながら生命感というか、日本の伝統的な琳派の大胆さを何となく感じさせる作品ではないかと思います。この方がこれからどんどん研究を進めれば、非常に面白い提案ができる作家に成長するのではないかと思います。
今年は、出品点数は少なかったのですが、作品の質は非常に高いものが沢山あり、審査する方が勉強になる感じでした。
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