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開催概要  Prospectus

質疑応答

写真 [質問者3]  山中漆器産業技術センターの呉藤です。漆器業界からすると、今後漆器がどう生き残っていくかを考える上で、国際漆展を非常に参考にしています。今、漆器の業界は本当に仕事も少なくなってきて大変ですが、その問題は、先生方がいろいろとおっしゃっていた審査の難しさというか、漆や漆器のいいところは何であるかというようなこととまさしく同じではないかと思っています。国際漆展という展覧会の出品作品の中から、漆の良いところを考えるのでは、狭すぎるのではないかという気がするのです。
 先生方も良い漆のものを持っていらっしゃると思うので、作る人だけが出品するのではなくて、使っている人が持っている漆の良さのようなものを出品できる場があると、業界としては皆さんが考えている良い漆器とはどのようなものかということが見えてよいのではないかと思いました。
 作る人だけが評価されるという国際漆展の趣旨とは違うので、どうなのか分かりませんが、僕としては、作っている側だけではなくて、使っている側の漆の良さを知ることができる場があれば嬉しいと思って、意見を述べさせていただきました。

[大西]  確かにそのとおりです。ここにいらっしゃる方は、ほとんど作る側に属していると思います。作る人が使う人の気持ちを汲みながら作るのが、ものづくりの本来の在り方だろうと思いますし、そういう試みは非常に大事だろうと思います。
 ただ、作る人は未熟ながら自分の信念というか、何か頑固なものがないと、なかなかそれを遂行できません。ものを作る人は結構頑固で、自分の思いが強いのです。何が良いかとか周りのことばかり考えていると、自分のものではなくなってしまいます。
 ですから、大事なことは作る人と使う人がぶつかり合うというか、融合しあう場を作っていくことでしょう。最初から相手のことばかりを考えて作っていたら自分のものは何だったのだろうと、情熱もわいてきませんよね。
 ものを作ることには非常に原始的な感動のようなものがあって、それが行動に表れるわけですから、歌を歌うことと同じで、あまり目的ではありません。ですから、そういうプロモーションをしていくというか、例えばこのような展覧会をするときにセミナーを開いて、使う人と作る人が意見を展開できるような場にしていくのはいいのではないかと思います。
 作品は、創造力が中心になって初めて成り立ちます。これにブレーキをかけすぎてしまうと、思い切った創造性が表せないというか、情熱を投入しにくいですね。ですから、情熱は情熱でバンと投入してもらって、今度はそれを受ける側で、感じたことや意見をぶつけ合うような場づくりは、そう難しいことではないので、大いに結構だと思います。

[質問者3] 国際漆展は作品だけでなく、商品を出品してもいいのですね。

[大西]  全く、かまいません。ほかの先生にも、お聞きしましょう。山村先生いかがでしょうか。

写真 [山村]  いい質問だと思います。ここに入賞された作品だけではなく、今回は生活に使う商品もたくさん出品されました。例えば、非常に高温になる漆の実験を積み重ねて280℃以上の耐熱の漆を使ったIHクッキング用の鍋「うるしIH鍋」が、出品されました。それから、かんざしもそういう意味では商品です。アクセサリーもたくさん出ています。
 僕は工業デザイナーですから、呉藤さんがおっしゃるように石川県にはもっと素晴らしい商品がたくさんあるので、商品としての応募ももっとあればうれしいと思います。その中で議論をして、どれを選ぶかは審査員の採択になります。先ほど坂口さんのご質問にもあったように、賞として選ばれたものだけを見ると、商品を出してはいけないようなニュアンスもあるかと思いますが、商品がもっとたくさん出されることを私は非常に期待しています。素材も前回には見られなかった多様さがありました。石川県は漆の殿堂ですから、もっとたくさん素晴らしい商品が出てくることを願っています。
 漆が窮地にあって、苦しんでおられることはよく分かります。もちろん円高やデフレなど、いろいろな経済的要因があると思いますが、やはり今まで安くて大量に作る方向だけにエネルギーをかけすぎたことが問題の一つかと思います。ですから、商品を魅力的に演出するデザインにパワーを注いでいくと、少し変わった局面が出てくると思います。流通の方たちも、そういうものを非常に求めています。売り買いしない作品とはまた違って、こんなものがあったら借金をしてでも買いたいという魅力的なものがどんどん出てくるとうれしいです。
 これ以外にも、先ほど北欧デンマークから応募されたパルプモールドの器「STAR PATTERN VASE」が出ていましたが、あれによく冷えたおいしいワインを注いで飲んだらきっとうまいだろうな、シャンパンでもきっと合うだろうというイメージがわいてきます。これがどれぐらいの値段で売られたらいいかを考えていくと、とても楽しい審査になると思います。こういう場を借りて、これからの新しい漆器の商品開発にもぜひ挑戦していただきたいと思います。

閉会

写真 [棒田]  以上をもちまして、講評会を終了させていただきます。先生方、本日は大変貴重なご意見を本当にありがとうございました。
 「国際漆展・石川2012」は、来年1月28日から2月2日の6日間、金沢市内のめいてつエムザ8階催事場で開催します。「国際漆展・石川2012」の入賞、入選作品75点と、併設展として、国内の主要漆器産地10カ所の新商品開発や用途開発の動向も展示いたしますので、ご期待いただければと思います。
 また、来年2月25日から3月20日まで、石川県輪島漆芸美術館で巡回展を開催することとしています。多くの皆様方のご来場をぜひお待ちしております。
 それでは、以上で「国際漆展・石川2012」の講評会を閉会します。最後になりますが、先生方にもう一度盛大な拍手をお願いします。(拍手)どうもありがとうございました。

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