審査員特別賞受賞作品の講評
[山村]
私が選んだのは「枝羽#10-09」という作品です。これは竹林にかかるクモの巣のように、細い竹の枝をテンションを生かしてたわませ、そこに漆で三次元の面を構成していくという、非常にシンプルな構造です。たわんだ美しさを精いっぱい生かす技法は、日本ではたわみ尺の器、城の城壁、寺の屋根などで使われていますが、このようなものを本当に竹で構成された面に生かして、見事に作り上げた作品です。
私は工業デザイナーなので、こういうものを見ると非常に軽くて美しい曲面は、おそらくこれからアクセサリーや装飾品などに使っていける、いろいろな可能性を持った作品だと考えて選びました。本当に美しい、軽くても力のある三次元の形態です。
[権] 私が選んだ「器2011」は藍胎漆器に見えますが、素材は乾漆です。真ん中は1.5cmまでの結構厚い乾漆の生地を作って、竹のような感じの漆画を描いています。非常に細かく絵を描いて、真ん中には亀が泳いでいます。サイズも結構大きくて、直径40cm以上のお盆と30cmぐらいのお皿のセットです。裏もきちんと漆画が細かく描かれています。展覧会で展示されたら、よく見ていただければと思います。
[大西]
私が選んだ「STAR PATTERN VASE」は本物の漆は使っていません。インドのカシミール地方の古い伝統として、コチニールという虫の殻から取った樹脂に顔料を入れて色を出しているインドの伝統漆器の技法が生かされています。体は紙をパルプ状に溶かし、それを型に当てて成型したものを母体にして塗り重ねていっています。作者のデンマークのシュトルゴーさんは、毎回出しておられます。色が非常に鮮明に出る特徴があるので、非常にさわやかなデザインとしていつも表現されています。
何げないパターンのようですが結構工夫をしてあり、パターンの背景が一定していません。位置によって変化させています。そのような細やかなセンスが非常に魅力的な作品です。インドのカシミールは紛争地帯なので、今はなかなか入れないのですが、私も一度行ってみたいと思っています。シュトルゴーさんはデンマークの女性作家ですが、いろいろなバリエーションで作品を作りますし、個展等もやっていて、デンマークではかなり知られています。
一見、単調に見える中に、微妙な変化を入れている現代的な感性が感じられて、室内等で使うものとして、ぜひもっと展開していただきたいと思い選びました。
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