Discussion
審査講評(2)

審査の概要報告

大西

大西───── おはようございます。遠路からお越しいただいた方もいらっしゃると思いますが、このような機会を得まして、私たち漆に関わる者として非常に重要な漆というテーマを持ったこの展覧会も、11回目を迎えました。我々は大切だ、大切だと言っていますが、何が大切かということをやはり問い続けなくてはいけませんし、これだという言葉で説明するのは大変難しいものです。
私は第1回からずっとこの展覧会に関わってきたのですが、今回のテーマも「新しい広がり」という言葉を使っていますけれども、漆文化を理解する広がり、あるいは作品を作る広がりということを絶えず願ってきました。ただ、そのような気持ちとは裏腹に、漆を広く浸透させ、また、皆さんの関心を高めていただくことは、実際問題としてなかなか難しいことでした。それでも先ほど説明があったように、徐々に広がっています。それがぱっと広がって、ぱっと消えていくようなことがないようにしたいと、いつも願っている次第です。
そのような期待と願いを込めながら、作品の到着数や応募者の方々の広がりをお待ちしつつ、審査では作品を拝見したのですが、徐々に外国の方々の関心が地に着いてきたように感じます。中でもロシアとは国を接しているのですが、意外と塗り文化まではよく知らなかったのが、前回から素晴らしい作品を送ってくださるようになり、情報がだんだん行き届いて、今回は4点の作品が入選を果たしました。その技術は非常に高度で丁寧なものです。日本の漆の仕事にすごく影響を受けながら、また、独自の風土の中で制作をなさっているということで、それは素晴らしいことだと思います。塗り文化に対する関心というのでしょうか、そういうものが非常に伝わってくる作品です。
非常に数多くの応募があり、会場の都合もあって内外を合計して80点ばかりに絞らなくてはならないということで、第1次審査は非常に苦しいものでした。画像で見るのは限界がありますから、われわれもよくよく繰り返し見ながら選んでいます。人間のやることですから、あまり確実とは言えないかもしれませんが、努力してきました。ただ、もう少し会場に余裕があれば、より多くの作品を選びたかったと思う次第です。
そして、昨日に本審査を行い、めでたく3点の作品が大賞と金賞に入賞しました。デザイン部門の金賞、アート部門の金賞、総合の大賞です。良い作品がそろっており、非常に難しい審査となりました。デザイン部門も、アート部門も非常に新しさを意識されて、かつ、皆さん確固たる漆の技術を間違いなくお持ちでした。それを新しい時代に対してどう表現するかというテーマが創造につながっていくわけですが、これは言ってみれば一番難しい課題です。技術がありますから、作ろうと思えばどんなものでも作れるのですが、いざ作るとなると、時代や社会、生活といったものを踏まえなければ物は生み出せないということで、その難しさをわれわれも作品を見て痛感しました。
いずれにしても、この展覧会は唯一の国際展ですし、今はグローバルな時代に入っていますから、さらにこの優しい漆文化を世界に語りかけていきたい、また、盛り上げていきたいと願いながら、審査員の皆さんともそのような会話を交わしつつ、希望と期待を持ったところです。

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