Discussion
審査講評(8)
質疑応答
質問者 ──── 輪島の吉田宏之です。今回も評価していただき、ありがとうございました。2005年から市松の作品ばかり作り続け、今回で4点目となりますが、この12年間いろいろ工夫を重ねてきました。普段の商品づくりでも、この努力が少しずつ自分の個性として身に付いてきたと思っています。2020年の東京オリンピックでも市松模様がロゴマークに採用されて、追い風が吹いているのではないかと感じていますが、山田節子先生に「オリンピックまでにこのような商品を作ってはどうか」というアイディアがありましたら、ぜひ伺いたいと思います。
山田 ───── 吉田さんの作品は、長年、拝見してきました。市松の箱物というのは地味でありながら、誰もが良いと思うのですが、使い手の立場になりますと、「さあ、買おうか」となりますと手が出なくなってしまうわけです。ただし、今回の作品は、正月にお節を盛って、テーブルの上に並べたらいいなと思いました。
オリンピックに向けてということになると、海外のお客さまもたくさんいらっしゃるので、全ての面に市松を施すのは手がかかり過ぎて大変かもしれませんね。乾山の色絵阿蘭陀写し市松文の粋でおしゃれな向(のぞき)がありますが、市松を上手に取り込むことで、持って帰りやすく扱いやすものが生まれるように思います。
以前、ガラス工芸作家の方から作品が売れないと相談されたことがありましたが、食卓の宝石と名付け、宝石のように美しい小皿を作ったらどうかと提案しまして、テーブルの上にいっぱいに並べて展覧会をしたことがあるのですが、皆さん宝石を買うような気分で買っていかれました。ですから、ぜひこの市松をもっと展開しながら、小箱や向(のぞき)に発展させていくと、身近に置いて使いやすいものが生まれてくるのではないかと思います。以前よりはずっと市松の描きが柔らかくなってきていて、それは描いて描いてという良さだろうなと思って拝見していますので、楽しみにしています。
大西 ───── 他にいらっしゃいませんか。
今回、審査員の先生方のコメントや解説の中にいろいろ良いアドバイスがたくさん込められていたように感じています。恐らく皆さんの頭の中には新たな作品の構想等、アイディアが湧いてきているのではないでしょうか。私自身聞いていて、良いご意見が先生方からたくさん出たように思います。その中には、すぐにアイディアにつながるようなこともあったかと思いますし、いろいろな先生方の思いを述べていただきました。
漆の重要性については、それぞれの先生方がお話しになったとおりです。ただ、それを具体化していく実行力がないことには、いくら言葉で述べても駄目なわけです。今日おみえの皆さんは恐らく作る側の方々だろうと思いますが、アイディアが生まれた方は早速実行していただき、次回に発表の機会もありますから、いろいろなチャンスを生かして活動していただきたいと思います。
次回の国際漆展はわずか3年先ですが、それまでの間にまた大きな新しい時代の変化も明らかになってくるでしょうし、漆の重要性が新たに叫ばれるときも必ず来ると思います。漆は永遠の素材ですから、日本国が存在する限り、漆は私たち民族の心の中から消えることはありません。ぜひ次回に大いに期待するとともに、皆さんも多くの作家の方々と語り合いながら挑戦していただきたいと思います。また、石川県デザインセンターにもお願いしましたが、3年の間に1〜2回ぐらいは、このような対話の機会を設けていただけたらという希望を持っています。皆さんもぜひ漆を生かす頑張りをしてください。どうぞよろしくお願いします。
閉 会
荒川 ───── 大西先生をはじめ、審査員の皆さま、本当にありがとうございます。大変貴重な、素晴らしいコメントを承りました。人に優しく、環境にも優しい漆の世界が、タイトルにもあるようにさらに世界に広がっていくよう私どもも頑張りますので、今後ともご指導のほどよろしくお願いします。
また、今日ご参加の皆さま、最後までご清聴ありがとうございました。配布資料にもあるとおり、「国際漆展・石川2017」は10月13日から25日までの13日間、石川県政記念しいのき迎賓館で開催します。さらに、企画展として10月5日から12月6日まで、石川県立伝統産業工芸館において、県内外産地企業の新商品とデザインセンターが所有しているコレクションの展示をする予定です。加えて、石川県輪島漆芸美術館において巡回展を11月11日から翌年1月14日まで開催予定です。今日お話しいただきましたコメントも頭に置きながら、機会があれば、ぜひご覧ください。2020年のお話も出ましたが、作り手の皆さまにも次回再びチャレンジするときには、さらに新しい世界が広がるように、お願いして講評会を閉会したいと思います。本当にありがとうございました。
また、審査員の先生方におかれましては、長時間にわたり誠にありがとうございました。温かい拍手をお願いします。(拍手)