講評会
審査員特別賞受賞作品(7点)について(1/7)
棗 ─────次に、審査員特別賞に移らせていただきます。大西長利賞は、戸田蓉子様の、「ひとにあはむ つきのなきには おもひおきて むねはしりひに こころやけおり 鋼屑、漆黒臍帯真鍮屑、金古代炉鋼屑、銀蓮華座真鍮屑」でございます。大西先生、コメントをよろしくお願いいたします。

大西 長利 賞
ひとにあはむ つきのなきには おもひおきて むねはしりひに こころやけおり 鋼屑、漆黒臍帯真鍮屑、金古代炉鋼屑、銀蓮華座真鍮屑
Hitoni-awamu Tsukinonakiniwa Omoiokite Munehashirihini Kokoroyakeori; Steel Scrap, Jet-Black Umbilical Cord Brass Scrap, Gold Furnace Steel Scrap, Silver Lotus Throne Brass Scrap
①W10 × D10 × H1.5、 ②W3.7 × D5.2 × H1.5、 ③W8.2 × D8.2 × H1.5、 ④W11 × D11 × H1.5
※4点の組作品。写真の作品は①
戸田 蓉子
TODA Yohko(Japan)
大西 ─────よくご覧になっていただくと分かると思うのですが、部品がたくさんある作品です。自然の形というものをうまく取り込んでいっているというか、それが見事に定着しているという感じになっています。
棗 ─────大西先生、ありがとうございました。引き続き、藝大時代の大西先生の教え子でございます田中先生からコメントをお願いいたします。
田中 ─────大西先生の賞ということで、ご指名ですので一言説明させていただきます。本来ならば大西先生のお言葉を皆さんお聞きしたいと思うのですけれども、恐縮です。
戸田さんの仕事は私も以前から知っていて、願船漆工房で、大西先生の下で修業されて、比較的有機的な形態をした作品が多かった印象があるのですが、この作品シリーズは私は初めて見ました。作者の意図として、「金属スクラップを床の間に上げたいと思い作り始めました」ということです。屑と書いてありますけれども、機能がある意味ではなくなった、身近にあるスクラップに美を見いだした。逆にそういうものに美を見いだす視線というのは、今素材を問わず多く見られますが、彼女も今までの作品とは違う視点で制作されています。作者は、漆を塗ることは物を変容させる、別のものとして生まれ変わらせるというようなことも述べています。
漆には、塗料として、また接着力という素材の特性があって、接着材として縄文の古くからいろいろと活用されてきました。金継ぎはその代表で、金継ぎは今とても人気がありますが、世界的に物を再生するという循環型志向、自然志向がそこにはあります。
同じような視点で、彼女は身近にある金属のスクラップに漆を塗ることによって、ものを再生しようとした。そこに彼女の工夫された文字が、螺鈿(らでん)で貼られていています。私は正直に言うと、この文字の表現、文字を使う意味が、単なる模様に見えて、加飾を加える意味がちょっとピンとこなかったのです。古びた金属と表現として螺鈿文字を加えた表現の関係。但し、スクラップ自体に漆を塗って再生しようとする、そこに新た漆による美や表現を見いだそうとする視点は、面白いと感じました。
大西先生の考えと違ってしまうと怒られてしまうのですけれども、私の印象ではそういう評価をさせていただきました。何か気になる作品で、魅力的な作品であったと思います。
棗 ─────田中先生、ありがとうございました。
