講評会

金賞受賞作品(2点)について(1/2)

玉屋  ───── どうもありがとうございました。引き続きまして、金賞の作品に移りたいと思います。2点ございますので、初めにアート部門の作品です。藤田和さんの「たゆたうⅠ」です。山村慎哉先生、よろしくお願いいたします。

山村慎哉  ───── では、講評させていただきたいと思います。藤田さんはいらしているのですか。おめでとうございます。
審査ではこの作品にほとんどの先生方が票を入れたので、何の問題もなく上位に来たということになります。作品に関して説明したいと思います。もし間違っていたら訂正していただきたいと思います。
母体はガラスです。キャスティングですので、型を作って、そこにガラスを流し込んでいて、このガラス部分はご自身で制作されているのではないかと思います。漆の部分に関しては、布か和紙を張っていらっしゃるのですかね。ということで、半乾漆のような形になっています。
全体としては伝統的な仕事をしていて、蒔絵螺鈿が中心ですが、蒔絵に切金等が入っていますので、いろいろな技法を入れながらガラスの表面に加飾している作品です。そして透き漆ですね。漆独特の半透明の飴色の漆がかかっています。技術的にもかなり高いレベルになってきていますし、表現している世界は海の中の景色ということで、海藻なども含めての表現になっています。
漆とガラスというのは普通に塗ってしまうと、水に漬けたらぺろっと剥がれてしまって、非常に相性が良くないとされてきました。近年はよい中間材が出て、少し前になりますが金沢の人間国宝の大場松魚先生も、ガラスの上に同じように平文や蒔絵螺鈿を使った作品を作っています。そのとき以来の仕事になると思います。藤田さんの場合、自分で造形もしているところもあるので、この辺が新しいかなと思います。
あと、ガラスの特性としてどうしても透けますので、透けることによって実は貝の裏側であるとか、ガラスを通した漆の色も見えてくるということで、かなり奥行き感のある作品に仕上がっていると思います。
本審査会では、私もそうなのですが少し大きな作品も知っていたので、もう少しボリュームがあってもいいのかなという評もありましたが、今回技術的なことも含めて金賞になりました。

玉屋  ───── どうもありがとうございました。それでは、金賞を受賞されました藤田和さん、会場にいらっしゃるということで、せっかくですのでどうぞ前の方に出てきていただいて、一言コメントを頂ければありがたいと思います。今のお気持ちであるとか、作品に込められた思いであるとか、一言頂戴できればと思います。よろしくお願いします。

藤田  ───── 改めまして藤田和です。このたびはこのような賞を頂き、とてもうれしく思っております。少し前に制作した作品なのですが、漆とガラスを組み合わせて作った作品で、初めて自分の中でもよくできたなと思えた作品だったので、本当にこのような賞を頂けてうれしく思っております。今後も漆の新しい表情や見せ方を追求していけるといいなと思っておりますので、応援のほどよろしくお願いいたします。ありがとうございました。

玉屋  ───── どうもありがとうございました。藤田さんにいま一度大きな拍手をお願いします。

金賞 たゆたう Ⅰ

金賞
たゆたう Ⅰ
Waver Ⅰ
W14 × D10 × H7.5
2020
藤田 和
FUJITA, Nagomi (Japan)

 

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