今回が第8回目となる「国際漆展・石川2009」は、
世界13の国と地域から215点の作品応募がありました。
8月6日(水)のスライド審査会で12の国と地域86点の作品
が通過し、展示会に向けて11の国と地域82点の作品が
寄せられてきました。そして10月23日(木)の本審査会で、
16点の入賞作品が決定しました。
本審査会翌日の10月24日(金)に開催したこの特別座談
会では、審査員の皆様方から審査結果の報告と入賞作
品に対する講評をいただくとともに、本審査を振り返っ
ての感想や漆の今後に対する意見などを語っていただ
きました。本稿では、その概要をご紹介いたします。
大西 長利 漆芸家、東京芸術大学名誉教授
小松 喨一 金沢卯辰山工芸工房館長
権 相五 漆芸家、新羅大学校芸術大学工芸学部教授、新羅大学校漆芸研究所長(韓国)
前 史雄 漆芸家、重要無形文化財(沈金)保持者
モニカ・コプリン ミュンスター漆器博物館館長(ドイツ)
山村 真一 デザインコンサルタント、潟Rボ代表取締役社長
開会と講師紹介
[棒田] 皆さん、おはようございます。ただ今より「国
際漆展・石川2009」の審査結果発表・特別座談会を開催いたします。私は、国際漆展・石川開催委員会副委
員長で石川県デザインセンター専務理事の棒田でございます。本日はざっくばらんな意見交換の場としたい
と思いますので、どうかよろしくお願い申し上げます。
先生方には本当にお忙しい中、遠くからお越しいただき、昨日は大変素晴らしい作品の中から、賞を決め
るという大変な役目をしていただきました。本当にありがとうございました。それでは、審査員の先生方を
ご紹介させていただきます。なお、本日ご出席の審査員の皆さまは、世界的にも著名な方々ばかりです。一
堂に会するこのような機会はめったにないと思いますので、よろしくお願い申し上げます。
まずはじめに、日本を代表するインダストリアルデザイナーの栄久庵憲司さんです。それから、東京芸大
の名誉教授で漆芸家としてご活躍中の、大西長利さんです。大西先生には、この「国際漆展・石川」の審査
委員長をお務めいただきました。それから、金沢卯辰山工芸工房の館長で、金沢美術工芸大学名誉教授の小
松喨一さんです。それから、韓国からお見えの、新羅大学校芸術大学工芸学部教授で、新羅大学校漆芸研究
所所長の権相五さんです。それから、重要無形文化財、沈金の技術保持者の漆芸家の前史雄さんです。
続きまして、今回から新たに審査員にお願いした先生方をご紹介します。ドイツからお見えの、ミュンス
ター漆器博物館館長のモニカ・コプリンさんです。コプリンさんは、ヨーロッパにおける漆器研究の第一人
者でもあります。そして、デザインコンサルタント、株式会社コボ代表取締役社長の山村真一さんです。山
村さんには、私どもデザインセンターが取り組んでいる事業に、いろいろと協力をいただいているところで
もあります。なお、本日の通訳は早川芳子さんに、逐次通訳形式でお願いしております。
事業概要と経過報告
[棒田] 最初に、本展の概要および経過について、簡単に説明させていただきます。お配りしました本審査
結果概要を、ご覧いただきたいと思います。本展は、漆の国際公募展として1989年に始まり、今回で8回目となります。漆を用いた新しい生活提案や新しい感性の提案等を、広く国内外に求めることで、漆産業の活
性化と、漆を通じた国際交流の推進、生活文化の向上を期待して開催しております。特に今回は、漆産業の活性化を図る観点から商品開発に重点を置き、商品開発特別賞を設けております。
今回の出展状況としては、「漆の新しい広がり」をテーマに、今年の2月から作品を公募し、世界13の国と地域から、215点の作品応募を受け付けております。
去る8月6日に、本日お見えの大西長利さん、権相五さん、山村真一さん、そして秋田公立美術工芸短期大学学長の樋田豊次郎さんの4人で、画像による第一次審査を行いました。大変厳しい審査となりましたが、その結果、世界12の国と地域から86点の作品が第一次審査を通過しました。
昨日の本審査には、一次審査を通過した86点のうち、世界11の国と地域から82点の作品が送られてきております。そして昨日の本審査会で入賞作品を決定いたし
ました。大変な力作ぞろいで、本審査も大変厳しいものがございましたが、大賞と商品開発特別賞、そして金賞を決定いたしました。審査結果は、入賞一覧のとおりです。
前置きが長くなりましたが、ここから進行は、スライド審査と本審査、両方の審査員を務めていただきました大西長利さんにお願いしたいと思います。
審査経過の報告
[大西]おはようございます。私、権先生、山村さん、それから秋田の短期大学の学長をしていらっしゃ
る樋田豊次郎さんの4名で、慎重に、スライド審査を担当しました。スライド審査というのは、スライド映写で作品を見ようとするわけですが、枚数がある程度
限られているなど、作品を見極めるにはなかなか難しいところがあります。ですから、われわれもいろいろな問題点を指摘しながら慎重に討議しました。その結
果、先ほどの報告にありました通過作品点数になりました。問題はなかったと思いますが、正直、スライド審査というのは難しいです。もっとほかにいい方法は
ないものかといつも思いますが、作品を外国から日本へ送って、落選してまた送り返すというのも大変なことですので、こういう国際展というものの難しさがあ
ると感じています。最近のいろいろな映像技術などを今後もっと活用する必要もあろうかと思いますが、国によっては設備がまだ十分でない所もあります。した
がってスライドでやるというのが、今のところは一番公平なものではないかと思います。
私はこの「国際漆展」の初回から、また企画段階から関わってきました。この展覧会は漆のいいものを発表するだけの会のようにとられやすいのですが、もっと理想的なものがあり、もっとスケールの大きなもの
だと考えます。日本を中心として東アジアに展開されてきた漆文化ですが、その技術はもう大変なもので、何万年の歴史があります。その長い深い意味をしっか
りと受け止めながら、理解を深めながら、さらに新たな未来へ向かって提案していくことをわれわれは夢に描いてきました。また、漆という素材が産業面から芸
術面、生活面にいろいろと密接にかかわっておりますので、一つの問題だけをクローズアップしても、本当
の漆というのはなかなかつかめないと思います。
現在の社会は、産業面や経済面など、いろいろな面で非常に多くの問題に直面しています。そういうものとからめますと、今度はまた漆の純粋な素晴らしさと
いうものが見えなくなってしまうのです。混沌としてきます。そうではなくて、漆の本当の良さをやはり見つけ出していくということを忘れないように、努力目標として掲げていきたいと思っております。
今日は、最終審査の結果について、ほかの審査員の先生方から、いろいろな感想、ご意見、批評等も聞かれると思います。まず私の方から総括的に申し上げま
すと、先ほどの報告にもありましたように、世界の11の国と地域から、漆に関心をもった方々の作品が寄せられ、私たちが期待していたような内容を見ることができ、この展覧会が着実に世界へ広がっていっているなと感じました。
今回の展覧会では、新たに産業振興を対象とした面をはっきりと提示したという部分が、これまでにない新しい試みになっております。
審査方法としては、各先生方に持ち点がありまして、自分が良いと思う作品に票を入れて、その集計によって上がってきた作品について、今度は皆さんでいろい
ろな角度から意見を述べ合いました。これはなかなか大変な作業で、私は委員長を務めさせてもらいましたが、一応心残りのない審査ができたと思っております。
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