講評会

審査員特別賞受賞作品(7点)について(3/7)

棗 ─────次は、川上元美賞でございます。古川友美様の「乾漆輪花水指」でございます。川上先生、よろしくお願いいたします。

川上 元美 賞 乾漆輪花水指


川上 元美 賞
乾漆輪花水指
Kanshitsu Rinka Mizusashi
W23 × D23 × H15
古川 友美
FURUKAWA Tomomi(Japan)

川上 ─────私が選んだのは、古川友美さんが作られた乾漆の輪花水指です。これは、長く培われてきた日本の伝統工芸の中で、幾多作られてきた水指の類型かと思います。しかし、その中に何か新しさを感じるのですね。よく見ると、従来の作り方の乾漆ではあるのだけれども、そのディテールがものすごく新しく感じます。いろいろ見てきましたけれども、一つまたこういう領域があるのかと。特にアートの場合、造形的に何か新しいものということが広がっていく中で、伝統工芸として、産業として、その位置付けの核にありながら作家を志した人たちの歴史があって、ある意味で踏襲しながら、その中で何か新規性を見いだしていこうという努力の結晶のようなものが逆説的に見えてきて、感動がありました。
この作品は塗り立てと書いてあるのですが、実は表面を見ると、本当に研ぎ出したように見えます。マットではあるのだけれども、何か精緻さがあって、多角形の形、波紋、輪花、プラスいろいろなディテールがそこに加味されていて、古くないというか、何かそこに新鮮さを感じました。新しい物質性というのでしょうか。神経の細かい、ある意味では日本の美学、伝統に続いていくというか、基本や本道の中での新しい試みを感じて、私は随分新鮮に感じたのです。
この方は岩手県在住なのですね。岩手県には浄法寺や安比がありますけれども、あの辺で活動されている方かなと思っています。あの地域にこういった伝統の踏襲の中に何か新しいことをされている方がいらっしゃるということは、漆の本道と言ったら変だけれども、そこを守っていく中での安堵感というか、強さというか、将来に向かっていく力を感じて、私はこれを賞に入れさせていただきました。

棗 ─────川上先生、ありがとうございました。

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